他人と深く関わらずに生きるには

池田清彦
エッセイ 2002年 新潮社
お気楽人'正論 ★★


たいそう心惹かれるタイトルだったので、思わず手に取ったのである。
見出しも『病院にはなるべく行かない』『心を込めないで働く』『ボランティアはしない方がカッコいい』『自力で生きて野垂れ死のう』など魅力的な断言がいろいろ。
何も反社会的な行為を奨励しているわけではなく、『とりあえずは世間という呪縛から自由になる必要がある』と、けっこう真面目な論調。

内容については肩透かし。願わくはもっと実践に即した具体的なサバイバルテクニックを並べてほしかった。
全体的にさして役立つ指針とはいえず、机上の空論に終始している。
この薄い本の後半を占める『他人と深く関わらずに生きるためのシステム』(の提案)など、妄想じみた駄弁だい。
こーゆー人を教授に頂くY大学のレベルも知れようってもの。

とまあ、こき下ろし放題は愛の裏返しで、実はとっても気に入ったのであった。
個人的には賛成したい部分が多い。と吐露しておく。


なので、これも読んでみた。↓

自由に生きることは幸福か

池田清彦
エッセイ 2000年 文春ネスコ ★★★


リバタリアンってオバタリアンの同類か?

のっけから『3億円で自由になれるか』てなネタで、いささか違和感が生じる。
生活費を得るために会社や組織に魂を売っていると感じる人々にとって、お金は確かに自由の象徴である。

が、わたくしなんぞは日々有り余る自由を持て余しており、その代償が貧しいフトコロなんだから、お金がない=自由という式が成り立つのである。
自分では案外幸せなほうかなーと思ったりもする。お金が増えたら幸せが減るんじゃなかろうか。

とはいえ、このささやかな幸せ感は相対的なものに過ぎない。おそらく(かなり不幸せな)他人との比較から生じている。比較をしている限り真の幸せは得られないであろう。

・・・では、幸せとはなんなのだ? 結局は心の持ちよう。
2008年03月30日 14:16 by 蕪  ※(0)  虎(0)  随想・評論

泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部

酒見賢一
歴史小説 2007年 文藝春秋 ★★★☆


あの絶賛『泣き虫弱虫諸葛孔明』の続編ということで、喜び勇んで手に取ったのだけど、あらら、1年も前に出ていたのね。不覚だった。

実は前編の内容など忘れてしまったが、いきなりこの第弐部から始めても、面白く(おかしく)読めること請け合い。『三国志』を知らない人でも、いちおう大丈夫。
ことさらに笑いを取ろうとしているのか、ちょっと引いてしまいそうな描写もときとしてある(気になるほどではない)。

展開ののろさは相変わらず。前回やっと三顧の礼にこぎつけ、この巻でも孔明はろくに、いや、全く活躍する機会を与えられず、機械を作ったりそのへんを燃やしたりしてうだうだ。
ラストで初陣(?)長坂坡(趙雲が阿斗を抱いて戦場を駆け巡るエピソード)に来て終わり。赤壁はまだ遠い。

『三國志』や『三国志演義』に加えて、裏三国志まで引き合いに出しながら、ネチネチと突っ込みを入れていれば、時間がかかるのもやむをえないとも見える。
ひょっとしてこれをライフワークにするつもりなのか。それは・・・わりと恥ずかしくなーい?
それに『泣き虫弱虫』というタイトルを悔やんでるのかな(縛られた印象)。

『三国志』はすでにストーリーが決まっている。こねくり回すだけなら誰が手がけても大差ないと思われるが、この本の売りはキャラクターにある。
デフォルメがはなはだしく、区別をつけやすいのである。ふにゃふにゃの均ちゃんやら、工口本狂いの簡雍やら、殺人マシーン張飛やら、誰も彼も個性が際立っている(無理やり際立たせている)。
そんな中で、孔明はやや霞がかかっているというか、いまいちはっきりしない。奥さんの黄氏はなかなかチャーミング。
2008年03月29日 17:29 by 蕪  ※(0)  虎(0)  歴史・時代小説

乱鴉の島

有栖川有栖
ミステリ 2006年 新潮社 ★★☆


間違って、あるいは導かれて、カラスの島へ上陸してしまった火村とアリス。
そこで隠遁生活を送る高名な詩人、海老原瞬を慕って集う怪しげな人々。そしてお定まりの連続殺人。

ケータイがうじゃうじゃ普及してしまった現在、電話線が切られて連絡不能という状況を作るには、もはや孤島くらいしかありやせん。切断された電話線への対処法に関する疑問(電気コードのようにつなげられないのか?)は毎度わきおこるのであるが、これもお約束事として容認しておこう。

ハナシとしては読めるし、面白い(一般小説にすればよかったのにね)。
だけど、ミステリとしては「致命的につまらない」と断言したい。
理由? 殺人法がありきたりで、トリックというほどのものもないこと。動機がかなりチャチなこと。

それでも「人」が充実していれば補えよう。しかしキャラクターの魅力が足りぬ。狭い島なのに、どうでもいいような人々が多すぎて、区別もつかず(つかなくても差し支えないほどの軽さ)。
少数でも犯人当てが難しいのが、よくできたお館モノであるぞ。

それぞれ巷に実在する「誰やら」をモデルにしていそうな、あくの強い人物が出てくるのが、かえって安易さを浮き彫りにしているようでもある。モデルとなった人の記憶は2年も経つと人々の脳裏から消えてしまうであろう。
なによりも、「高名な詩人」とやらが、人々をそれほど動かすことのできるカリスマ性を持つと納得できるように描けていないので、核となる真相が絵空事っぽいのである。

下敷きにポー『大鴉』。
Nevermore... ふっとフレディの高い声がよぎる。
2008年03月25日 10:16 by 蕪  ※(0)  虎(0)  ミステリ・推理


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